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今野敏さんの隠蔽捜査を読んでみた [雑談]

もともと自分はそれほど本を読むほうではないのだが、嫁に勧められて今野敏の「隠蔽捜査」を読んでみた。

読んだ感想を一言でいうと、非常に面白かったし、他の人にも勧めたい。

読む前は、タイトルからしてどうせ良くある警察とか刑事を題材にしたミステリーかサスペンスだろうと思っていたが、そんなに浅いものではなかったのである。

警察官僚を題材に本当の正義や、人として大切なこと、家族の絆、父親とは?、などを見事に描いている。

同時に現代警察や官僚の問題点を訴求しているのだが、実際に本に記載されているような国をあげての「揉み消し」があったかどうかは、判断出来ない。

しかし、おそらく大小はあるだろうが警察内部の揉み消しというのは存在するのであろう。

世の中は本音と建て前が異なっていることは誰もが知っていることである。

この作品の主人公は「原則」というものを確実に守る男で、官僚として国のためにやるべき建て前を忠実に実践するのである。

それが国家を挙げての揉み消しであっても例外ではなく、それが悪いものであると指摘する。

警察のトップに君臨するような上司の官僚が相手でもまったく怯むことは無いのである。

なによりかっこよかったのは、その自分が正しいと信じることに向かったときの行動力の凄まじさや執念である。

上司から「お前が考えることではない」とか「お前の仕事ではない」と言われているのに、それが間違っていると判断し、あらゆる手段を用いて正しいほうに覆すのである。

仕事をしていると痛感するが、上司の意向に逆らうこと自体がまず難しいし、実際にそれを成し遂げるなど、到底不可能なことである。

彼には官僚としての役割を全うすることについては、一点の迷いもないのである。

しかし、家族内で発生してしまった犯罪については、正しいことをすべきか、さすがに迷いがあった。

家族崩壊や自分の仕事へのペナルティを懸念してのことであるが、エリート官僚という国のために働く権限が失われることを一番恐れていたのである。

結果的にはこの家族の問題も正しく乗り越えるのだが、このあたりの主人公の行動力や考え方、葛藤などの描写が実にうまかった。

読み終えた後に清々しい気分になる作品である。


建て前のみを振りかざして前に進める人はほとんど居ないし、みな正しいと思っていることだけを実践できるわけではない。

例えば、道端でやくざが一般市民を恐喝しているところに危険を顧みず仲裁に飛び込めるだろうか?

例えば、子供には赤信号では絶対に道を渡るな、横断歩道を渡れ、と言っておきながら自分がもの凄く急いでいるときにそれを完璧に守ることができるだろうか?

例えば、くたくたに疲労した帰り道の電車でわざわざ一本乗るのを遅らせてまで座ったのに、次の駅で老婆が目の前に現れたときに笑顔で席を譲ることができるだろうか?

ちょっとレベルは異なるし極端な話かもしれないが、このような局面で自分が大切にしている正義と合致する場合はやるべきなのだろう。

価値観は人によって異なるので、なにが正義かも異なるが、自分の持つ正義については貫ける人になりたいものである。



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